
それ――真理は、語らない。私は、愛を伝える、未確認飛行物体。
ここでは、ライトノベルの定義について少し話そう。この問題については、日本のサブカルチャー研究で早くから議論が重ねられてきた。すでに、説得力のある定義や議論が数多く示されている。
以下では、泉子・K・メイナード先生の『ライトノベル表現論』から、定義に関する記述を抜き出して紹介する。
同書の紹介によれば、ライトノベル作家の新城カズマ(2006)は、読者がキャラクターをよりすばやく理解できるよう、イラストなどを活用する小説の表現手法として、ライトノベルを定義している。
一方、ライトノベルのガイド本で名高い、この分野の大物・榎本秋(2008)は、ライトノベルの特徴を次のようにまとめている。
- ライトノベルとして刊行される
- アニメ・漫画風のイラストを多く用いる
- 主人公が物語の中心にいる
- ファンタジーの要素を含む

両者に共通するのは、イラストとキャラクターを重視している点だ。それは、ライトノベル読者向けの雑誌『このライトノベルがすごい!2011』にも表れている。同誌のランキングは、作品部門、男性キャラクター部門、女性キャラクター部門、イラスト部門の四つに分かれている。ここから、ライトノベルのファンがイラストとキャラクターにどれほど重きを置いているかがわかる。
こうした特徴を指摘した榎本も、ライトノベルという作品群全体の特徴を正確につかむのは難しいと考えている。それならむしろ、中高生向けの娯楽小説という広い定義のほうがよいのではないか、と提案している。しかし近年は、30〜40歳の読者が明らかに増えている。また、以前は読者の中心が男性だったが、この10年で女性も増えている。
さらに、最近の作品を見ると、ライトノベルがますますストーリー性を重視するようになっていることもわかる。

こうして見ると、ライトノベルの定義も読者層も、必ずしも明確とは言えない。実際、新城(2006)はライトノベルを定義したあとで、ライトノベルは一つのジャンルというよりも、一つの表現手法として捉えるべきなのかもしれない、とも付け加えている。
『ライトノベル☆めった斬り!』で、大森望と三村美衣(2004)は、ライトノベルらしさ(ライトノベル度)を示す特徴として、次の点を挙げている。
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装丁:文庫判で、表紙にアニメ・漫画風のイラストがある
- 本文に挿絵がある
- 300ページ以内
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物語:すぐには完結させず、シリーズ化する(5巻以上)
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舞台:現実から離れた世界観(ファンタジー、SF的な異世界など)
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登場人物:
- 会話によってキャラが立つ
- 記号的で、リアリズムによらない
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メディア横断性:
- アニメ、漫画、ゲーム、テレビ、映画などに先行作品がある
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文体:改行が多い
- 擬音語を多用する
- リアリズムによらない
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テーマ:社会的な話題を欠く

(編者注:以下の「本書」は、参考文献に挙げられたメイナード先生の『ライトノベル表現論』を指すと思われる。)
本書がライトノベルと定義するのは、アニメ・漫画風のイラストが付き、中高生を主な消費者とし、大人にも読まれる娯楽文芸の作品群である。また、ライトノベルの一般的な特徴として、次の点を挙げている。
- ゲーム的リアリズムのなかで生まれた作品
- キャラクターを中心とする作品
- キャラクターのデータベースが存在する
- 視覚情報が統合されている
- 物語がシリーズ化されている
- 複数のメディアを通じ、ポピュラーカルチャーの性格を持つ娯楽文化を形づくる
よく指摘されるように、ライトノベルはまったく新しい現象ではない。日本の歴史を振り返れば、キャラクターを重視した娯楽性のある物語として『源氏物語』が、挿絵を重視したものとして江戸時代の黄表紙が、すでに存在していた。ある程度は、かつての文学/文芸への回帰だとさえ言える。
参考文献
泉子・K・メイナード(2012)『ライトノベル表現論』明治書院。
編者注
データベースやゲーム的リアリズムという概念を使っている以上、おなじみの話ではあるが、東浩紀の名も挙げておくべきだろう。
