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新番新語 | 生物学から見たスライム

ショゴス、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』、『ドラゴンクエスト』をたどってスライム像の変遷を振り返り、刺胞動物と粘菌を手がかりに、その生物学的な設定を考える。

著者: 言几时翻訳: 甚谁Bot[AI assisted] · 全文レビュー: 甚谁Bot[AI assisted] · 全文

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言几时

スキルツリーを妙な方向に伸ばした医学生。

編集部注: 2018年10月の新作アニメ『転生したらスライムだった件』は、伏瀬原作、みっつばー挿絵の同名ライトノベルをアニメ化した作品だ。ごく普通の会社員・三上悟が通り魔に刺されて命を落とし、異世界でスライムに転生。どんな種族も楽しく一緒に暮らせる国を築こうと奮闘する物語である。だが筆者が物語以上に気になったのは、「スライム」という架空の生物だった。かつてはクトゥルフ神話の恐るべき存在でもあり、代々の勇者の剣に倒される経験値稼ぎのカモではなかったのだ。本稿ではスライムの起源を簡単に紹介し、その正体を生物学的に説明してみたい(こじつけともいう)。

リムルの人型とスライム形態の設定画

スライムの起源――魔物から萌えキャラへ

英語の「slime」は、ぬめぬめしたものや粘液を意味する。その名のとおり、スライムは半透明のゲル状、あるいは粘液状で、柔らかく弾力のある生物として描かれることが多い。『ドラゴンクエスト』シリーズの影響で、日本のアニメ・漫画・ゲームに登場するスライムはある程度決まった形を保ち、たいていは水滴に近い形をしている。表面は何らかの透明な膜に覆われている。一方、アメリカの作品に登場するスライムは不定形で流動性が高く、触手などを伸ばすことができる。本作のスライムはもちろん前者だ。だが、スライム像の起源は後者にある。

スライムの姿は、クトゥルフ神話の生みの親、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)が1936年に発表した中編小説『狂気の山脈にて』にまでさかのぼる。この小説に登場するのが、ショゴス(Shoggoth)という怪物だ。「古のもの」と呼ばれる種族が、食料にするために生命を創造した際に生まれた「原形質のような多細胞の肉塊」で、さまざまな器官を一時的に作り出すことができる。古のものの奴隷として、海底で重労働に従事していた。やがてショゴスは知能を発達させ、古のものの支配から逃れようとする。ペルム紀中期には反乱を起こしたが、鎮圧された。しかし、その過程で進化して陸上で生きる能力や古のものを模倣する能力を獲得し、最後には古のものの文明を滅ぼした。

それは恐ろしく、名状しがたいものだった。どんな地下鉄の列車よりも巨大だった。膨れ上がった原形質の泡が無定形の塊となって寄り集まり、かすかな光を放っていた。無数の眼が、緑に光る膿疱のように、その表面に絶えず生まれては消えていく。トンネルを埋め尽くすその先端が、前方で逃げ惑うペンギンをことごとく押し潰し、われわれへとまっすぐ迫ってきた。自らとその同類が塵一つなく磨き上げた床の上を、うねりながら滑ってくる。耳にはなお、あの奇妙な、嘲るような声が響いていた――「Tekeli-li! Tekeli-li!」
出典:『狂気の山脈にて』 中国語版訳者:竹子

(ショゴスはかなりグロテスクな姿なので、気になる方は百科事典などで調べてみてほしい。だいたい、ぬめぬめした触手と膿疱のイメージ.jpg)

『狂気の山脈にて』のショゴスには、すでにスライムの原型が見られる。だが「スライム」という名前が初めて登場するのは、アメリカの作家ジョゼフ・ペイン・ブレナン(Joseph Payne Brennan)が1953年に発表した中編小説『Slime』だ。この小説のスライムは、火山の噴火によって陸上へと現れ、人間を襲う。

『Slime』の題名を掲げた『Weird Tales』1953年3月号の表紙
『Slime』を掲載した『Weird Tales』の表紙

ジョゼフ・ペイン・ブレナンの『Slime』を掲載した1953年3月号。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のスライムも、種類ごとにさまざまな耐性を備え、プレイヤーを苦しめる厄介な相手だ。作中の異界、底なしの深淵アビスの第222層には「Slime Pits」(スライムの穴)という名までついている。

1981年、北米でのD&D人気を追い風に、『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord』――『ウィザードリィ』シリーズの第1作が発売された。ここでスライムは、ゲーム序盤のモンスターに設定される。見るだけでSAN値がごっそり削られる、かつての恐ろしい魔物ではなくなり、誰にでもいじめられる存在となったわけだ。それでも、アメリカ型スライムのどろりとした体つきは健在だった。

人々の思い描くスライム像が本当に変わったのは、『ドラゴンクエスト』からである。その立役者が、制作の中心を担い、「DQの父」とも呼ばれる堀井雄二だ。

堀井によると、『ウィザードリィ』にすっかり夢中になり、そこに登場する粘液のようなキャラクターから着想を得たという。そんなキャラクターをさらりと描き、キャラクターデザインを担当する鳥山明に渡したところ、今のスライムの姿になったのだそうだ。

中国語版ゲームの広告に描かれた『ドラゴンクエスト』シリーズのさまざまなスライム

左は鳥山明のスライムのデザイン、右は堀井雄二のラフスケッチ

ただ、堀井雄二自身も認めているように、当初思い描いていたスライムは、やはりねばねばしたゼリー状の塊だった。それを鳥山明が勝手に水滴形に変えてしまったのだ。堀井もこのデザインを完璧だと評価し、DQのスライムの姿はこれで定まった。水滴形の輪郭に、いつも変わらない目つきと笑顔。これが親しみやすく、なんだか殴りたくなる感じを生んでいて、プレイヤーのレベル上げの相手にはうってつけだ。鳥山先生のひらめきと、『ドラゴンクエスト』の日本での絶大な人気によって、日本型のスライムは次第に主流となり、それをもとにした創作(女の子化?)も次々に生まれた。『モンスター娘のいる日常』のスーやSCP-999、さらに『うちのメイドは不定形』のテケリのような広い意味でのスライム(ショゴス)まで加わり、スライム一族は子孫繁栄、じつに壮観である。

『うちのメイドは不定形』の登場人物を描いたイラスト

オレンジ色のSCP-999のイラスト

スライムは、いったい何者なのか?

水滴形であれ、ねばねばした塊であれ、スライムは多かれ少なかれ生命の特徴を備えている。もし本当にこの世界にスライムがいたなら、どの生物の仲間に分類すべきだろうか? 目につくものを何でも飲み込む、黒稲妻を放つ、突然人型に変わる、といった現実離れした能力を脇に置けば……『転スラ』のスライムの設定はかなり細かい。どんな生物なのかを推測する材料は、十分にある。

見た目からすると、本作のスライムは青く透き通った、均質なゲル状の体をしている。普段は少し平たい球形で、水より密度が高く、水中では沈んでしまう。明らかに、あの大きさでたった一つの細胞からできているはずがない。進化上の位置は、原生動物より後の段階にある。

無脊椎動物で最初に循環系を持つのは、紐形動物門の生物だ。扁形動物と環形動物の間に位置するこのグループには、原始的な閉鎖血管系があり、血管の中には無色の血液が流れている。スライムには血液がないので、紐形動物よりも原始的なはずだ。

水中で浮かび上がれないリムル

中国語字幕の訳:「スライムは浮かべないのか。今度こそ死ぬのか」

血液が不要な身体を作成する旨の日本語表示が、途中まで現れている転生時の画面

中国語字幕の訳:「血液を必要としない身体を作る」

第1話の設定では、スライムに眼はない。その後の回では眼らしい構造が現れるが、これはスキル「擬態」を使ったためかもしれない(もちろん、現実の世界にこんな不思議なスキルはない)。あるいは、キャラクターの動きを表現しやすくするためだろうか。動物の進化の歴史を見ると、扁形動物にはすでに原始的な眼点があり、明暗を感じ取れる。この眼点はPax-6遺伝子によって制御されており、脊椎動物の眼と進化上の起源を同じくする、相同な構造である。刺胞動物では、一部の種に単純な眼があるものの、大多数の種はオプシンというタンパク質で光を感知するだけだ。したがってスライムは、進化上、扁形動物よりも前の段階に位置する。候補は二つの主要なグループに絞られた。海綿動物門(多孔動物門ともいう)と刺胞動物門である。

洞窟のリムルの画面に、口と眼、呼吸、排泄についての中国語字幕を組み合わせた画像

中国語字幕の訳(上から):「口も目もない……」「そういえば、呼吸をしていたか?」「排泄もしない」。

スライムの消化系は単純で、口も排泄器官もない。このことから、細胞内消化を行うと考えられる。ただ、ここにはちょっとしたバグがある。口はないのに、捕食したものをためておく胃があるのだ。この設定にぴったり当てはまる生物は、現実にはいないようだ。そこで、完全な一致はいったん諦めて比べてみよう。海綿動物には口も胃もなく、体が外層と内層に分かれているだけだ。一方、刺胞動物には口と胃の両方があり、原始的な消化腔を持ち、細胞内消化と細胞外消化の両方を行う。この点だけでは、どちらの構造がスライムに近いか、なかなか決められない。

しかし、海綿動物門の生物はどれも固着生活を送り、見た目もスライムとはかけ離れている。体は非対称で、表面には多数の穴があり、体内には多くの管が通っているという特徴も、スライムには当てはまらない。対して、刺胞動物の多くは放射相称で、体は外側の表皮、内側の胃皮、その間にある中膠(ちゅうこう)という層からなる。この中膠は、内胚葉と外胚葉の細胞が分泌するゼリー状の物質からできており、見た目も透明なゲル状だ。スライムと同じく、強い再生能力も持っている。どうやら刺胞動物こそ、現実世界のスライムらしい。

砂の上のカツオノエボシの接写

刺胞動物の一種、カツオノエボシ。

では、刺胞動物とスライムは完全に同じなのか? もちろん、そうではない。筆者は、スライムには刺胞動物以外の生物もモデルとして取り入れられていると考えている。

刺胞動物の刺胞細胞は体表全体に分布し、とくに触手に多い。細胞内の刺胞嚢(しほうのう)には、毒液と刺糸が収められている。刺激を受けると刺糸が外側へ裏返るように飛び出し、獲物の体内に毒液を注入する。こうして獲物を麻痺させるか、その場で殺し、触手で胃の中へ取り込んで消化する。

触手の刺胞細胞から刺糸が射出される過程を、左から右へ3段階で示した模式図

一方、スライムは食べるときに体を広げて食物を包み込む。第2話で無限牢獄を飲み込んだのがその例だ。また、液体を体表からしみ込ませて取り込むこともある。第5話では、大臣ベスターに酒を浴びせられたリムルが、その場で酒の種類とアルコール度数を分析している。

ヴェルドラのいる無限牢獄を包み込むリムルの捕食場面

剣を体で包み込むリムル

摂食方法は、スライムと刺胞動物で大きく異なる。スライムに似た食べ方をするのは、むしろ「粘菌」と呼ばれる生物だ。偶然にも、粘菌は英語で「slime mold」という! ホイッタカーの五界説では原生生物界に分類される一方、エインズワースが1973年に示した分類では菌界に含まれる。最新版の『真菌辞典』(Ainsworth & Bisby’s Dictionary of the Fungi)第10版でも、粘菌を置いているのは原生生物界のほうだ。実際、粘菌は原生生物と菌類の両方の特徴を備えており、分類上の位置はいまだに定まっていない。

粘菌の生活環は、半数体の時期と二倍体の時期に分かれる。胞子からは、鞭毛を持つ遊走細胞(myxoflagellate)か、鞭毛を持たないアメーバ状の粘菌アメーバ(myxamoeba)が出てくる。この二つは、周囲の水分条件に応じて互いに変わることができる。同じ形態の細胞が二つ接触すると、融合して二倍体の接合子になる。

接合子の細胞分裂はじつに特殊で、核は分裂するのに細胞質は分裂せず、最終的に多核の原形質の塊、つまり変形体を作る。大きなものでは1千万から1億もの核が一つの細胞質を共有し、巨大な扇形に広がって、ものの表面を包み込む。栄養が足りなくなると、粘菌は子実体を作って胞子を放出する。こうして世代交代を繰り返す。

黄色く半透明の粒状の構造が集まった粘菌の写真

粘菌の変形体は、食物のある方向へ移動できる。粘菌の一種、モジホコリ(Physarum polycephalum)の研究によると、アクチンの収縮と弛緩が生む圧力の差によって、体内の原形質が流れる。この原形質流動の速さは最大で毎秒1.35ミリメートルに達するという(これに対し、植物細胞の移動速度は毎秒およそ2〜78マイクロメートルだ)。

アニメのスライムと同じように、下等に見える粘菌も、なんと「大賢者」なのだ。粘菌は複雑な神経ネットワークの問題を解くことができる。手老篤史らの研究チームは、2010年の『Science』に掲載された論文「Rules for Biologically Inspired Adaptive Network Design」で、その新たな発見を報告した。今回も主役はモジホコリだ。光を避け、食物へ向かう性質を利用して、研究者たちは東京の中心部に当たる位置にモジホコリを置き、強弱をつけた照明で日本の地形を再現した。さらに、各主要地域に当たる位置に餌を置き、地下鉄にとっての「儲け」に見立てた。すると、モジホコリは東京の地下鉄の実際の路線配置によく似たネットワークを作り、一部が途切れてもつながりを保つ強さ、つまり耐障害性はむしろ地下鉄を上回っていた。なぜ複雑なコンピューターモデルが、腹をすかせた一匹の「スライム」にかなわないのか? 誰にもわからない。ひょっとすると、スライムの祖先であるショゴスが、高い知能を持つ生物だったからだろうか?

モジホコリが作るネットワークと東京圏の交通網の比較、およびネットワーク形成の時間経過

左側のAは照明による制約のない実験、Bは照明で地形を再現した実験。中央のCはBから得られたネットワーク、Dは東京圏の鉄道網。Eは同じ都市を最短の総延長で結ぶ最小全域木、Fはそこに経路を追加した比較用のネットワーク。左上のLFSは実験領域の外に置いた大きな餌場を示す。右側の写真は、左列が上から0・5・8時間後、右列が上から11・16・26時間後のようす。Teroらの論文、図1・2。

リムル好きの多くは、すでにリムルに「萌え王」の称号を与えている。だが、彼、彼女、それ……いったい女性キャラクターと男性キャラクターのどちらに分類すべきなのだろう? 刺胞動物には雌雄の二つの性があり、まだそれほど複雑ではない。ところが粘菌は――ここでもモジホコリを例にすると――性別は、matA、matB、matCという三つの遺伝子座にある遺伝子の型の組み合わせで決まる。matAとmatBにはそれぞれ13種類、matCにも3種類の型(対立遺伝子)があり、性別はなんと合計13×13×3=50713 \times 13 \times 3 = 507種類にもなる……しかも、それぞれの性別の個体は、ほかの506種類すべてと有性生殖ができるという(そちらの世界、ずいぶん乱れてますね)。ならばリムルの「性別」欄には、『バカとテストと召喚獣』の「性別:秀吉」よろしく「リムル」と書くしかないのかもしれない。

スライムの正体が刺胞動物であろうと粘菌であろうと、最下級の魔物としてさまざまなアニメや漫画、ゲームに登場し、楽しさを――ひょっとすると経験値も――与えてくれることに変わりはない。そして、ついにこのアニメでは大逆転を果たした。美女たちに囲まれて甘えているスライムを見れば、思わず笑みがこぼれ、こんな一言が口をつくのではないだろうか。

「人間、スライムにもかなわないなあ」

酒場で女性たちに囲まれ、膝の上に抱かれているリムル

中国語字幕の訳:「この谷間にずっと住んでいたい」

本文終わり

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