
「私は知識の荒野に立っている。見渡すかぎり、果てがない」
ネタバレなしの短いおすすめ
2017年8月7日の制作決定発表から529日。『君の膵臓をたべたい』(以下『キミスイ』)が、ついに中国本土で公開された。最初は私も多くの人と同じく、少し釣りっぽいその題名に惹かれただけだった。やがて、題名こそ少し不気味だが、中身は現実の世界を舞台にした、ごく普通の物語なのだと分かった。
主人公の「僕」は、病院で偶然『共病文庫』という日記を拾う。それをきっかけに、日記の持ち主であり、クラスの人気者でもある少女、山内桜良と関わるようになる。冷淡で人付き合いを避ける少年と、明るく、治らない病を抱えた少女。二人はともに、青春と死と愛をめぐる物語を紡いでいく。
あらすじを読んだだけで、そのお約束めいた出だしから、数えきれないほどのお約束の結末が頭に浮かんだ。だが、そこから疑問も生まれた。『キミスイ』には、いったいどんな予想外の面白さが隠されているのだろう。小説が260万部も売れたのは、なぜなのか。こうして疑いから期待が芽生え、実際に観て初めて、私は『キミスイ』の巧みさを理解した。
死は一瞬だ。だが、愛はそうではない

『キミスイ』は、同じような題材の物語のお約束から外れている。たとえば、私が読んだ『半分の月がのぼる空』。同じく重い病を患う少女、同じく病院での出会い、同じく高校生の物語だ。しかも、秋庭里香の手術の成功率がきわめて低いのに対し、『キミスイ』のヒロイン、桜良には最初から死が定められている。ところが、桜良の前に現れた相手は、予想とは正反対だった。自分から彼女を気遣い、大切にしてくれる運命の王子様ではなく、彼女の病気を知っても、ありきたりな慰めの言葉一つ口にしないほど冷淡な同級生だった。
だが、これはお約束を外す第一歩にすぎない。さらに、病気をめぐる展開は、物語の中心から完全に外される。代わって中心に描かれるのは、桜良と主人公が一緒に食べたり飲んだり、あちこちへ遊びに出かけたりする日々だ。こうした場面が積み重なることで、もともと互いをよく知らなかった二人は、次第に相手を知り、次第に心を開いていく。
恋愛は幽霊だ。あの夏、秘密を共有した二人は、たくさんのことを一緒に経験し、分かち合った。それでも最後に、二人の心の間にはどれほどの距離が残っていたのか、作者ははっきりと描いていない。主人公の感情はすべて、彼の冷淡さに抑え込まれている。一方、桜良の思わせぶりな言動はどれも、冗談や好奇心の表れとも取れてしまう。もしかすると二人自身にも、「恋愛」という名の幽霊を本当に見たのかどうか、分からなかったのかもしれない。ただ、相手と一緒にいたいということだけは確かだった。

物語を薄い霧のように包み込むこの感情こそが、私を惹きつけてやまない。ここにも、この物語の巧みさがある。愛していると言うのは簡単だ。愛していないと言うのも簡単だ。だが、その間にある感情をどう捉え、一本の映画の中で無理なく育て、描き出すか。それは決してたやすいことではない。そこからは、原作者とアニメのスタッフたちの努力もうかがえる。
青春を体現する女子高生
少し前に最終回を迎えた『SSSS.GRIDMAN』では、TRIGGERの描く宝多六花の女子高生らしさ、その「JK力」の高さを多くの人が称賛していた。だが、女子高生といっても、その姿は一人ひとり違う。宝多六花が女子高生の魅力を体現している一方で、『キミスイ』の山内桜良が見せてくれるのは、彼女ならではの青春だ。

(画像内の中国語字幕の意味:話したら、彼女は私に会うたびに泣いてしまう。)
外の世界への好奇心と活力にあふれた姿は、多くの人が思い浮かべる青春のイメージだ。多少型にはまっていても、それを目指して人物を描くことはできる。作中の桜良で何より印象に残るのも、そうした青春らしさだ。外向的で活発な彼女は、理不尽な扱いを受けた人のために声を上げ、自分の好きなやり方で青春を「バラ色」に染めていく。だからこそ、それまでそうしたものとは無縁だった主人公を、自分の青春の物語へと引き込んだのだ。
だが、迷いも不安もまた、青春の主旋律だ。まして、治らない病を抱え、余命いくばくもない少女ならなおさらだろう。病状についての描写は少ない。けれど、不安がそっとにじむいくつかの言葉や、かすかに陰る表情があるからこそ、観客は彼女の笑顔の下にある不安をいっそう強く感じる。それによって、桜良の人物像にも奥行きが生まれる。

行動や考え方だけでなく、アニメは装いを通しても、さりげなく彼女の青春を描いている。注意して見ていると、桜良は長い髪を下ろしたいつもの制服姿のほかにも、さまざまな装いを見せていることに気づく。ツインテールに濃い色の上着を合わせた、活発なスタイル。旅行のときには、髪を丁寧に結い、濃い色の服にネックレスと腕時計を合わせ、少し大人びた姿を見せる。また、髪を無造作に結び、白無地のキャミソールにゆったりしたホットパンツをはいた姿もある。胸元にはピンクのサクランボが二粒あしらわれている。部屋着らしいくつろいだ雰囲気に、可愛らしさが少し添えられている。こうした変化に富んだ装いにも、青春のただ中にいる女子高生の、美しくありたいという思いが表れている。

振る舞い、言葉、服装が一つになって、青春の息吹に満ちたこの少女を描き出している。これこそ、私が最もリアルに感じる青春の姿なのだ。もしあなたもこんな少女に出会ったら、もう二歩、近づいてみてはどうだろう。彼女のいちばん美しい青春を感じてみてほしい。
短い文章では、この作品の魅力もほんの一、二点しか伝えられない。最後に、あなたにも映画館へ足を運び、この物語をまるごと味わってほしい。そして、あの少女が口にする、あの一言を聞いてほしい——「君の膵臓をたべたい」。

編集部より:
この短評をきっかけに、より多くの人にこの劇場アニメを観て、関連作品にも触れてもらえればと思う。
個人的には、二人の関係は当然、普通の恋愛関係をすでに超えていると思う。