
私たちは、すばらしいものを守るために多くの時間を費やす。一つひとつのアイデアに触れ、そのアイデアが届いた人々の暮らしを変えるまで。
本稿は、屋顶の年間原稿募集企画「拾荒战略 2022」後夜祭の受賞稿である。

要旨
日本のアニメにおいて、髪色と性格は、普通に考えれば互いに独立しているはずだ。しかし、アニメファンの間では「金髪ツンデレ」「ピンク髪ヤンデレ」といった結びつきも確かに見られる。本稿ではまず、語の出現回数の集計とネットワーク分析を用い、髪色と萌え要素のキーワードが共起する全体的な傾向を分析する。ただし、この方法にはいくつか問題がある。そこで次にTF-IDFアルゴリズムを用い、観客と作り手それぞれの視点から、髪色に対する性格と性格に対する髪色の重要度を求め、両方向の順位を照合する。分析の結果、「金髪ツンデレ」をはじめ、どちらの方向でも重要度の高い組み合わせは数多く存在することがわかった。これは、作り手と観客が互いにフィードバックを与え、組み合わせの出現頻度を繰り返し高めていくことと関係している可能性がある。一方、「ピンク髪ヤンデレ」など一部の組み合わせは、強い結びつきには含まれない。この組み合わせが生まれた背景には、過去に成功を収めた特定のキャラクターが深く関わっている可能性があり、色彩心理学とも多少の関係があるかもしれない。
キーワード:日本のアニメ、語の出現頻度分析、ネットワーク分析、テキスト分析、キーワードの共起。
1. はじめに
日本のアニメでは、キャラクターを見分ける手がかりとして髪色が広く使われている。とりわけ登場人物の多い作品では、一人ひとりの名前を覚えるのは難しい。髪色という目立つ外見上の特徴は、その作品のキャラクターをまだよく知らなくても、人物を覚え、ほかのファンと話すうえで役に立つ。たとえば『リコリス・リコイル』では、真島が顔を出す場面が少ないため、その名前をなかなか覚えられない。しかし、緑色の髪は非常に目立ち、作中にはほかに緑髪のキャラクターも登場しない。そのため、会話のなかでは「緑髪のやつ」と呼ばれやすく、それでも話は問題なく通じる。
このように人物を見分ける手がかりとして髪色を捉え、アニメの物語を作る側から考えると、髪色という外見上の特徴は、一つの作品のなかでそれぞれに「固有」のものであり、「ランダム」に決まると考えるのが自然ではないだろうか。つまり、髪色そのものと、その人物の性格は互いに独立していて、関連がないはずだ、ということだ。従来の、シミュラークルをデータベースから生み出すという考え方に従えば、髪色も性格も「ランダムに抽出」されるはずなのだから。
ところが、それと矛盾するように、アニメファンの間では長年、「金髪ツンデレ」「ピンク髪ヤンデレ」など、髪色と性格を結びつける「ステレオタイプ」が語られてきた。「金髪ツンデレ」を例にとると、観客から見れば、「金髪」のキャラクターは「ツンデレ」である可能性が高い。逆に、「ツンデレ」という性格も「金髪」のキャラクターに見られる可能性が高い。そうだとすれば、ある髪色とある性格の間には強い結びつきがあり、完全にランダムではないことになる。
では、日本のアニメのキャラクターの髪色と性格には、実際に関連があるのだろうか。あるとすれば、その背後にはどのような仕組みがあるのか。ないとすれば、なぜ関連があると言われるのか。本稿では定量分析を通して、これらの問いに答えていく。
2. データの出所と概要
本稿では、中国語のアニメ関連百科事典サイト「萌娘百科」をデータの出所とし、Pythonによるクローリング(自動収集)で、2000年から2021年までの日本のアニメ2,145作品、延べ17,353人のキャラクターのデータを収集した。収集条件は次のとおりである。①アニメのリンクが有効であること。②キャラクターのリンクが有効であること。③同じアニメが1年に2シーズン以上制作され、主要人物に変更がない場合は、1シーズンとして数えること。
キャラクターのデータ収集を終えた後、各人物の項目に記載されている髪色、瞳の色、萌え要素のデータも収集し、まず選別と整理を行った。選別条件は次のとおりである。①キャラクターに独立した項目があり、一意に特定できること。②髪色のデータがあること(2色以上ある場合は先頭の2色を収集)、または瞳の色のデータがあること(2色を超える場合は先頭の2色を収集)。③有効な萌え要素があること。
萌娘百科にはリンクのリダイレクトがあるため、萌え要素の表記を統一し、髪色や瞳の色だけを示す萌え要素は削除する必要がある。また、本稿が注目するのは髪色なので、髪色の情報があるキャラクターだけに絞り込んだ。髪のないキャラクターも、髪色の情報がないため除外した。再度整理した結果、最終的な分析対象は、2000年から2021年までの日本のアニメ1,325作品、延べ13,307人となった。髪色は13種類、萌え要素は性格、外見、身分などを含む2,145種類である。
3. ネットワークと出現回数による分析
3.1 出現回数の集計とネットワークの構築
本稿で注目するのは、髪色と、萌え要素のうち性格に関わる項目との関係である。まずは萌え要素全体を対象に、髪色をⅠ類ノード(点)、萌え要素をⅡ類ノードとし、両者の間に共起関係を表すリンク(線)を張って、各種ノードの出現回数を集計した。ただし、同じ類のノード同士には、共起関係のリンクを張っていない。集計結果を表1に示す。
出現回数を見ると、髪色ごとの差は非常に大きい。黒髪の出現回数は茶髪や金髪よりもはるかに多く、茶髪と金髪も、それ以外の髪色よりはるかに多い。一方、虹色の髪や透明な髪はきわめて珍しく、出現回数もごく少ない。萌え要素ごとの出現回数の差は、それに比べると小さい。
さらに、髪色と萌え要素の組み合わせの出現回数を集計した。結果を表2に示す。
髪色と萌え要素の共起回数をもとに、ネットワーク図を構築した。関係が複雑なうえ、本稿が注目するのは最も強く結びつくノード同士の関係である。そこで、各ノードから共起回数が最も多い相手へのリンクを残すTOP1アルゴリズムで処理した。処理後の共起ネットワークを図1に示す。
| 順位 | 髪色 | 髪色の出現回数 | 萌え要素(一部) | 萌え要素の出現回数 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 黒髪 | 22,049 | 巨乳 | 1,747 |
| 2 | 茶髪 | 15,956 | 短髪 | 1,501 |
| 3 | 金髪 | 15,840 | ツンデレ | 1,461 |
| 4 | 銀髪 | 9,643 | 元気 | 1,380 |
| 5 | 青髪 | 7,655 | 天然ボケ | 1,072 |
| 6 | 紫髪 | 6,391 | 眼鏡 | 1,049 |
| 7 | ピンク髪 | 5,656 | ギャップ萌え | 1,013 |
| 8 | 赤髪 | 5,197 | 腹黒 | 996 |
| 9 | 緑髪 | 3,271 | 妹 | 992 |
| 10 | オレンジ髪 | 3,203 | ロリ | 991 |
| 11 | 白髪 | 1,106 | 貧乳 | 988 |
| 12 | 虹色の髪 | 48 | 優しい | 987 |
| 13 | 透明な髪 | 6 | 姉 | 982 |
| 順位 | 髪色 | 萌え要素 | 共起回数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 黒髪 | 黒髪ロングストレート | 459 |
| 2 | 茶髪 | 短髪 | 375 |
| 3 | 黒髪 | 短髪 | 360 |
| 4 | 黒髪 | ツンデレ | 333 |
| 5 | 黒髪 | 巨乳 | 331 |
| 6 | 金髪 | 金髪碧眼 | 324 |
| 7 | 茶髪 | 巨乳 | 317 |
| 8 | 金髪 | 巨乳 | 303 |
| 9 | 茶髪 | 元気 | 299 |
| 9 | 黒髪 | 眼鏡 | 299 |

赤いノードは髪色、青いノードは萌え要素を示している。また、中心性の高いノードほど、図中の面積も大きい。図からは、ノードがいくつものまとまりを形成していることがはっきりとわかる。髪色の出現回数が多いほど、それにつながる萌え要素のノードも多く、正の相関が見られる。また、一部の髪色と萌え要素には双方向のリンクがある。つまり、互いが相手にとって最も共起回数の多い語になっている。ネットワーク全体から見れば、ある髪色とある萌え要素の間には、確かに一定の結びつきがあると言える。
3.2 出現回数による集計の限界
共起関係を調べるうえで、出現回数の集計は単純でわかりやすいという利点がある。しかし、3.1の集計結果からは、いくつかの問題も見えてくる。
第一に、表1と表2を比べると、出現回数の多い黒髪、茶髪、金髪は、ほかの萌え要素との共起回数も相対的に多く、上位10組を占めている。この3色以外の髪色を含む組み合わせは、40位まで下がらないと現れない。同じく出現回数の多い巨乳、短髪、ツンデレも、上位10組に入っている。
第二に、たとえば表2の黒髪―巨乳(331回)と茶髪―巨乳(317回)を比較してみよう。回数だけを見れば、黒髪のほうが結びつきは強い。しかし、黒髪の出現回数は茶髪の約138%なのに、巨乳との共起回数では約4%しか上回っていない。これでは、その萌え要素にとって黒髪のほうが重要だとは言えないように思われる。一方、黒髪ロングストレートと金髪碧眼という2つの萌え要素は、それ自体の出現回数は多くないのに、髪色との共起関係が非常に強い。要するに、「強いノード」と「弱い関係」、「弱いノード」と「強い関係」の間で、どう釣り合いを取るかという難題にぶつかるのである。
最後に、ネットワーク図を見ると、2つの髪色ノードとつながる萌え要素のノードがある。言い換えれば、その萌え要素にとって共起回数が最も多い相手は髪色Aだが、髪色Bにとっては、その萌え要素こそが最もよく共起する語なのである。ここでも、何を重視するかという先ほどの問題に突き当たる。結局のところ、出現回数による集計は、個々の語の出現回数に結果が左右されるため、共起関係を測る方法としてあまり適切ではない。
4. TF-IDFによる特徴抽出
4.1 TF-IDFの概要
ジップの法則によれば、ある語の出現頻度は、その順位に反比例する。これは、第3章で述べた出現回数による集計の限界と同様、頻出語が必ずしも重要語ではないことを示している。重要語をより適切に抽出するため、本稿ではテキスト分析でよく用いられるTF-IDFアルゴリズムを導入する。TFは単語頻度、IDFは逆文書頻度を指す。ある語を含む文書が少ないほど、その語はカテゴリーを見分けるのに役立ち、IDFの値も大きくなる。TF-IDFの計算式は以下のとおりである。
ここで、はその語の出現回数、は条件を満たすテキストの総語数、は総文字数、はその語を含む文字の数である。TF-IDFの値が大きいほど、その条件のもとで、その語の重要度が高いことを示す。
4.2 データの絞り込み
第3章の集計結果をもとに、分析を簡略化するため、重要度の低いノードの一部を除いた。髪色については出現回数の少ない虹色の髪と透明な髪を除き、11項目とした。萌え要素については出現回数が100回未満のノードを除き、222項目とした。
4.3 髪色に対応する性格のTF-IDF
髪色を条件として、それと共起する萌え要素のTF-IDF値を計算した。このうち性格に関わる萌え要素を残し、上位10項目を図2に示す。
図中の用語:「三無」は、寡黙で表情や感情が表に出にくいタイプを指す。「無口」「無表情」「クーデレ」とは別の項目として扱う。また、図内の「天然萌」は「飾らないかわいさ(天然萌)」、「小天使」は「天使のような子」、「クール美人」は「クールビューティー」を指す。




髪色を条件に計算することは、観客がキャラクターの髪色を見て、その人物が持ちそうな性格を、重要度の高いものから順に考える過程を模している。TF-IDFによる抽出で、いくつかの萌え要素の重要度が際立った。たとえば白髪のキャラクターでは、「狂気」のTF-IDF値が0.1を超えたが、出現回数の集計では、白髪も狂気も回数は少なかった。また、いくつかの髪色には、一定のステレオタイプが見て取れる。銀髪のキャラクターは、「三無」のような、冷たい印象の性格に偏り、赤髪のキャラクターは活力にあふれた性格に偏っている。
ただし、ツンデレや元気といった性格の萌え要素は、髪色によってTF-IDF値に差こそあるものの、それ自体の出現回数が多いため、多くの髪色で重要度が高いこともわかる。したがって、髪色を条件に性格を絞り込むだけでは、両者の結びつきを説明するにはやや不十分である。
4.4 性格に対応する髪色
次に、作り手の視点から分析する。つまり、キャラクターに設定した性格に合わせて髪色を与える過程である。性格に関わる萌え要素を条件に、それと共起する髪色のTF-IDF値を計算した。性格の項目は多いため、1位と2位の髪色のTF-IDF値の差が0.05を超えるもの、すなわち1位の髪色がはっきりと突出している性格だけを分析対象とした。上位5色の順位を図3に示す。図3の棒の色は、それぞれの性格にとって最も重要な髪色を表している。

図注:「残念系」(2行1列)の左から5本目の髪色名は判読できないため、原図の表記を残した。「天然腹黒」は、無自覚な腹黒さを指す。
作り手の視点から、各性格に対応する1位の髪色ノードだけに注目すると、茶髪は「少しおバカで純真なかわいい子」といったイメージで捉えられる。4.3で見たようなステレオタイプが、ここでも浮かび上がるのである。
しかし、性格を条件として髪色のノードを絞り込むだけでも、やはり両者の結びつきを十分には説明できない。
4.5 両方向のランキングの照合
結びつきをより明確にするため、4.3と4.4の順位を照合した。性格に対応する髪色は上位2色のみを取り出し、結果を簡略化した。照合結果を表3に示す。
| 結果の区分 | 髪色 | 萌え要素 |
|---|---|---|
| 両方向に共通 | 黒髪 | 大和撫子、優しい、クールビューティー、ツンデレ、ギャップ萌え |
| 〃 | 茶髪 | 優しい、癒やし系、天然ボケ、気弱 |
| 〃 | 金髪 | 天然ボケ、ツンデレ |
| 〃 | 銀髪 | 三無、飾らないかわいさ(天然萌) |
| 〃 | 青髪 | クールビューティー、お人よし、ギャップ萌え |
| 〃 | 紫髪 | M属性、まじめ |
| 〃 | 白髪 | 狂気 |
| 髪色に対応する性格にのみ含まれる | 黒髪 | 腹黒、天然ボケ、ツッコミ、元気、無口 |
| 〃 | 茶髪 | 元気、ツンデレ、ギャップ萌え、腹黒、ツッコミ、おバカ |
| 〃 | 金髪 | 元気、腹黒、優しい、ギャップ萌え、毒舌、紳士、おバカ、強気 |
| 〃 | 銀髪 | ツンデレ、ギャップ萌え、腹黒、無口、天然ボケ、優しい、毒舌、クールビューティー |
| 〃 | 青髪 | ツンデレ、腹黒、元気、優しい、天然ボケ、ツッコミ、女王様気質 |
| 〃 | 紫髪 | ツンデレ、腹黒、ギャップ萌え、天然ボケ、元気、S属性、優しい、中二病 |
| 〃 | ピンク髪 | 元気、天然ボケ、腹黒、ツンデレ、優しい、小悪魔系、癒やし系、おバカ、毒舌、ギャップ萌え |
| 〃 | 赤髪 | ツンデレ、元気、強気、天然ボケ、優しい、ギャップ萌え、おバカ、毒舌、ツッコミ、紳士 |
| 〃 | 緑髪 | 元気、天然ボケ、ギャップ萌え、ツンデレ、腹黒、ドジ、ツッコミ、癒やし系、毒舌、恥ずかしがり |
| 〃 | オレンジ髪 | 元気、天然ボケ、おバカ、優しい、ツンデレ、ギャップ萌え、ツッコミ、癒やし系、うっかり者、天使のような子 |
| 〃 | 白髪 | 天使のような子、腹黒、ギャップ萌え、天然ボケ、ツンデレ、優しい、中二病、大和撫子、無表情 |
| 性格に対応する髪色にのみ含まれる | 黒髪 | 三無、恥ずかしがり、クーデレ、まじめ、お人よし、気弱 |
| 〃 | 茶髪 | 負けヒロイン、天然腹黒(無自覚な腹黒さ)、恥ずかしがり、鈍感、飾らないかわいさ(天然萌)、天使のような子 |
| 〃 | 金髪 | 負けヒロイン、残念系、癒やし系、鈍感、天使のような子 |
| 〃 | 青髪 | 多重人格、天然腹黒(無自覚な腹黒さ) |
| 〃 | 紫髪 | 大和撫子 |
| 〃 | 赤髪 | 狂気 |
| 〃 | オレンジ髪 | 残念系 |
照合結果を見ると、両方向に共通する組み合わせは、ふだんアニメファンの間で語られているステレオタイプと大きく重なっている。本稿の冒頭で挙げた「金髪ツンデレ」も、この共通部分に含まれる。これは、金髪とツンデレが確かに強く結びついていることを証明している。しかし、「ピンク髪ヤンデレ」という組み合わせは、どちらの方向の上位集合にも、つまり両者の和集合にも含まれていない。
5. 原因の考察とまとめ
5.1 「金髪ツンデレ」型の原因
以上の分析から、日本のアニメのキャラクターの髪色と、その人物が持つ性格に関わる萌え要素の間には、一定の相関があるとわかった。この結果は、アニメファンが長年抱いてきた直感ともおおむね一致している。ここからは、こうした相関が生まれる原因を考えていく。
まず、髪色とキャラクターの萌え要素の種類は、確かに比較的限られている。過去半世紀以上にわたるアニメ制作をすべて見渡したとき、「この髪色と萌え要素の組み合わせはまだ一度も登場していない」と、そう簡単には言えないだろう。東浩紀の「データベース」論によれば、現在のキャラクター制作は基本的に、要素のデータベースから必要なデータを取り出して組み合わせることで成り立っている。よく使われる髪色や人気のある性格、つまり萌え要素は、全体の種類数に比べればさらに少ない。そのため、界隈でステレオタイプとされるような、よくある組み合わせが生まれるのは避けられない。
要素を寄せ集めてキャラクターを作るという特徴は、今日のアニメでますます一般的になっている。その背後には、2つの問題がある。一つは、消費社会のなかでアニメ、とりわけ商業アニメを大量に制作する必要があることだ。制作本数を増やそうとすれば、作り手は一人ひとりのキャラクターを作り込むことに多大な労力を費やせない。かといって、あまりに平凡で観客の印象に残らない人物にもできない。そこで、いくつかの萌え要素を加えることが、一石二鳥の解決策となる。これなら作り手は、それほど似たり寄ったりには見えないキャラクターを、短時間で大量に生み出せる。
もう一つは、観客の側で消費のファストフード化が起きていることだ。観客は、個々の作品のなかではそれぞれに特徴がありながら、全体としては著しく似通っているキャラクターにお金を払っている。慌ただしい日々のなか、人々は「芸術作品」としてのアニメを落ち着いてじっくり見ることが難しくなっている。むしろ求められているのは「ファストフード」としての作品であり、次々と押し寄せる視覚的な刺激なのだ。キャラクターの背後にある物語よりも、短時間で見せられる外見や言動の萌え要素を好む観客のほうが、おそらく多い。作り手も観客もこうしたあり方を受け入れるなら、データベースをもとにしたキャラクター制作は、ますます避けられなくなる。今後は、異なる萌え要素同士を組み合わせたものが、さらに数多く現れるかもしれない。
こうした相関があると確認したうえで、次に、数ある組み合わせのなかでも「金髪ツンデレ」のような定番がなぜあふれるようになるのかを考えよう。本稿では、偶然のデザインから生まれたあるキャラクターが、作品の大成功によって、観客やほかの作り手に強い印象を残すことが始まりだと考える。源流をたどるのは難しいので、ここではひとまず『スクールランブル』の沢近愛理を例にする。後の作り手は、この種の属性を持つキャラクターと聞くと沢近愛理を思い浮かべ、ツンデレの人物に、金髪やツインテールといった似た属性を無意識に加えるのかもしれない。ここでは、心理学でいう「自己成就的予言」という現象で説明を試みたい。あまりにも成功したキャラクターがいることで、後の作り手の意識の奥では、その人物と関連する属性が結びつく。同時に、人はその結びつきに合わない情報を、自動的にふるい落としてしまう。たとえば今回の実証分析では、金髪は残念系や負けヒロインといった属性とも高い相関があるし、黒髪や茶髪のキャラクターにもツンデレは少なくない。しかし作り手が、その結びつきに合うキャラクターにより多くの注意を向けたことで、後の三千院ナギ、秋月愛莉、澤村英梨々などが生まれた。こうしたキャラクターを通じて、金髪ツンデレ、さらにツインテールという組み合わせが強化されていったのである。

このやり方が商業的に成り立つには、もう一つ、消費者に受け入れられるという前提がある。そして実際、消費者はこういうものにすっかり食いつく。すでに優れた例があるため、似たキャラクターを見ると、むしろその作品にも手を伸ばしてみたくなるのかもしれない。以前流れていた「中国人はみんな白髪好き」という言い方も、その一例だ。
先ほどの、作り手が特定のキャラクターとその属性を結びつけるという説明は、観客にも当てはまる。新しいキャラクターが次々と現れるなかで、印象に残り、真っ先に思い出せるのは、必然的にごく一部の著名なキャラクターである。ある属性を思い浮かべると、有名なキャラクターが頭に浮かび、その人物が持つほかの属性も自然と結びつく。すると、これらの属性はセットになるものだ、と思うようになる。その後、同じ2つか3つの属性を備えた別のキャラクターを見ると、その印象はいっそう強まる。たまに当てはまらない人物を見ても、その印象が正しいという感覚は揺らがない。こうして最終的には、金髪がツンデレやツインテールと結びつくというステレオタイプが、皆の間で形作られるのである。
5.2 「ピンク髪ヤンデレ」型の原因
ただし、観客が共有するイメージに「偏り」が生じることもある。ピンク髪とヤンデレの関係が、その例だ。この10年ほど、観客の間ではピンク髪とヤンデレがセットだという印象がしばしば見られる。しかし、先ほどの分析結果では、ピンク髪のキャラクターはそもそも全体の出現回数が少ないうえ、ヤンデレよりも元気や天然ボケといった萌え要素のほうが重要だった。これも先ほどと同じく、大成功した特定のキャラクターから強い影響を受けたためかもしれない。本稿では、それは『未来日記』の我妻由乃ではないかと推測する。当時、作品が我妻由乃というキャラクターを印象深く描き出すことに成功したため、比較的ニッチだったヤンデレという属性が広く知られるようになり、由乃の表情を使った画像もミームとして界隈で大量に広まった。我妻由乃はほとんどヤンデレの代名詞となり、それに伴ってピンク髪もヤンデレと結びついたのである。確かに、その後も松坂さとうやキサラなど、ピンク髪ヤンデレに当てはまるキャラクターが現れ、観客の印象を強めている。しかし、データ上ではその結びつきは目立たない。

また、先ほどの髪色と性格の関連には、色彩心理学で扱われるような、色が与える印象の作用も多少うかがえる。たとえば銀色は冷たい感じを与えるため、「三無」のそっけない印象と一致する。赤髪なら燃えるような情熱を感じさせるため、その性格も活力にあふれたものが多い。同様に、ピンク色が与える印象はかわいらしさであり、TF-IDF値の高い性格を見ても、確かにかわいらしいものが多い。しかしピンク髪では、腹黒も重要度の高い性格である。中国語の「粉切黑」、つまりピンク色のものを切ってみれば中は黒い、という言い方がそれを表している。本稿で取り上げた「ピンク髪ヤンデレ」も同様だ。その狙いはまさに、ピンク髪のかわいらしさによって背後の暗さを際立たせ、ギャップ萌えを生み出すことにあるのだろう。印象が反転する瞬間に観客を驚かせるとともに、人物像をより立体的にできる。こうして「ピンク髪ヤンデレ」は、まるで騙されたかのような独特のギャップによって、広く語られる組み合わせになったのである。
しかし、こうしたギャップを作るには、物語やキャラクターを作り込む手腕が大いに問われる。扱いを誤れば、観客はその人物にたやすく嫌悪感を抱いてしまう。だから、ヤンデレという性格は、キャラクター制作でよく使われる萌え要素ではない。ヤンデレのキャラクターを生かす優れた物語を作れるなら、むしろピンク髪は必須ではなくなる。黒髪や茶髪といったありふれた髪色でも、そのキャラクターを魅力的に描くことはできるのだ。
以上から、髪色と属性の関連には、2つの形があるとわかる。一つは、実際に存在する関連である。作り手が制作時に意図してその組み合わせを選び、観客もそれを認識するという、双方に共有された結びつきだ。もう一つは、観客側だけに生じる錯覚としての関連である。こちらは、作り手がキャラクターを作る際の選択傾向としては、はっきり現れていない。