
本稿は、屋頂現視研の年度論考募集「拾荒戦略 Rags Drum 2022」の後夜祭受賞作である。

要旨
日本アニメでは、一般に考えれば、髪色と性格は互いに独立しているはずである。しかしファンのあいだでは、「金髪ツンデレ」や「ピンク髪ヤンデレ」のように、両者を結びつける見方が確かに存在する。本稿はまず、出現頻度の集計とネットワーク分析を用いて、髪色と萌え属性のキーワードが共起する全体的な状況を統一的に分析し、その手法にいくつかの問題があることを示す。続いてTF-IDFを用い、髪色と性格の重要な関係について、視聴者と制作者それぞれの観点からデータ処理と集合の比較を行う。分析の結果、「金髪ツンデレ」をはじめ、互いに重要語となる組み合わせの多くには、実際に強い結びつきが認められた。これは、制作者と視聴者のフィードバックによって組み合わせの頻度が繰り返し強化されたためかもしれない。一方、「ピンク髪ヤンデレ」などは強い関係には含まれない。その組み合わせが広まった理由は、過去に生み出された一部の成功したキャラクターと切り離せず、色彩心理学とも一定の関係がある可能性がある。
キーワード:日本アニメ、頻度分析、ネットワーク分析、テキスト分析、キーワード共起。
1. はじめに
髪色は、アニメでキャラクターを識別する方法として広く使われている。とりわけ登場人物の多い作品で、一人ひとりの名前を覚えるのは難しい。目立つ外見的特徴である髪色は、作品の人物にまだ詳しくない段階でも、そのキャラクターを覚え、ほかのファンと語り合う際の障害を取り除いてくれる。たとえば『リコリス・リコイル』では、真島の顔が映る時間が比較的短く、名前を忘れやすい。しかし緑色の髪がよく目立ち、作中にほかの緑髪の人物もいないため、「緑髪」と呼んでも意思疎通に支障は生じにくい。
したがって物語制作の観点から見ると、髪色という外見的特徴は、作品内で「固有」でありながら「ランダム」に割り当てられ、互いに独立していると自然に考えられる。つまり、髪色そのものとキャラクターの性格とのあいだに関連はないはずである。従来の「シミュラークルのデータベース」という考え方に従えば、髪色も性格も「ランダムに抽出」される要素のはずだ。
ところが、アニメファンのあいだでは長年、「金髪ツンデレ」「ピンク髪ヤンデレ」のように、髪色と性格を結びつけるステレオタイプが語られてきた。「金髪ツンデレ」を例に取ると、視聴者の側から見て、金髪のキャラクターはツンデレである可能性が高く、逆にツンデレの性格は金髪のキャラクターに現れる可能性が高いと考えられている。これは、ある髪色とある性格のあいだに、完全なランダムではない強い結びつきがあることを意味する。
では、日本アニメのキャラクターの髪色と性格は、実際に関連しているのだろうか。関連があるなら、その背後にはどのような仕組みがあるのか。関連がないなら、なぜ関連を語る言説が存在するのか。本稿は量的分析によって、これらの問いに答える。
2. データの出典と概要
本稿は萌娘百科をデータ源とし、Pythonによるスクレイピングで、2000年から2021年までの日本アニメ2,145作品、延べ17,353人分のキャラクターデータを収集した。収集条件は、①アニメのリンクが有効であること、②キャラクターのリンクが有効であること、③一つのアニメが一年に2期以上制作され、主要人物に変化がない場合は、1期として数えること、の三つである。
キャラクターの収集後、それぞれの髪色、瞳の色、萌え属性のデータをさらに取得し、予備的な選別とクリーニングを行った。選別条件は、①独立した項目があり、対象が一意に定まること、②髪色データがあること(2色以上の場合は先頭の2色を収集)、または瞳色データがあること(2色以上の場合は先頭の2色を収集)、③有効な萌え属性があること、の三つである。
萌娘百科のリンクにはリダイレクトがあるため、萌え属性の表記を統一し、単に髪色や瞳色を示す属性は削除した。また本稿は髪色を主に扱うため、髪色の情報があるキャラクターだけを残した。髪色情報のないスキンヘッドのキャラクターも削除した。再度クリーニングした後の最終サンプルは、2000年から2021年までの日本アニメ1,325作品、延べ13,307人である。13種類の髪色と、性格、外見、身分などを含む2,145種類の萌え属性を扱う。
3. ネットワークと頻度による手法
3.1 頻度集計とネットワークの構築
本稿が注目するのは、髪色と、萌え属性のうち性格に関わるものとの関係である。そこで、髪色をI型ノード、萌え属性をII型ノードとし、両者のあいだに共起関係のリンクを設け、それぞれのノードの出現頻度を集計した。同じ型のノード同士にはリンクを設けない。頻度の集計結果を表1に示す。
髪色の頻度には非常に大きな差がある。黒髪のキャラクターは茶髪や金髪よりはるかに多く、茶髪と金髪もほかの髪色よりはるかに多い。虹色と透明の髪はきわめて珍しく、出現頻度が低い。一方、萌え属性の頻度差は比較的なだらかである。
さらに、各組み合わせの出現頻度を集計した。結果を表2に示す。
髪色と萌え属性の共起頻度をもとに、図1のネットワークを構築できる。関係が複雑であり、本稿がもっとも強く結びつくノードだけを扱うため、共起ネットワークの処理にはTOP1アルゴリズムのみを用いた。
| 順位 | 髪色 | 頻度 | 萌え属性(一部) | 頻度 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 黒髪 | 22,049 | 巨乳 | 1,747 |
| 2 | 茶髪 | 15,956 | ショートヘア | 1,501 |
| 3 | 金髪 | 15,840 | ツンデレ | 1,461 |
| 4 | 銀髪 | 9,643 | 元気 | 1,380 |
| 5 | 青髪 | 7,655 | 天然ボケ | 1,072 |
| 6 | 紫髪 | 6,391 | 眼鏡 | 1,049 |
| 7 | ピンク髪 | 5,656 | ギャップ萌え | 1,013 |
| 8 | 赤髪 | 5,197 | 腹黒 | 996 |
| 9 | 緑髪 | 3,271 | 妹 | 992 |
| 10 | オレンジ髪 | 3,203 | ロリ | 991 |
| 11 | 白髪 | 1,106 | 貧乳 | 988 |
| 12 | 虹色髪 | 48 | 優しい | 987 |
| 13 | 透明髪 | 6 | 姉 | 982 |
髪色の頻度は、黒髪22,049、茶髪15,956、金髪15,840、銀髪9,643、青髪7,655、紫髪6,391、ピンク髪5,656、赤髪5,197、緑髪3,271、オレンジ髪3,203、白髪1,106、虹色髪48、透明髪6の順である。一部の萌え属性は、巨乳1,747、ショートヘア1,501、ツンデレ1,461、元気1,380、天然ボケ1,072、眼鏡1,049、ギャップ萌え1,013、腹黒996、妹992、ロリ991、貧乳988、優しい987、姉982の順となる。
| 順位 | 髪色 | 萌え属性 | 共起頻度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 黒髪 | 黒髪ロングストレート | 459 |
| 2 | 茶髪 | ショートヘア | 375 |
| 3 | 黒髪 | ショートヘア | 360 |
| 4 | 黒髪 | ツンデレ | 333 |
| 5 | 黒髪 | 巨乳 | 331 |
| 6 | 金髪 | 金髪碧眼 | 324 |
| 7 | 茶髪 | 巨乳 | 317 |
| 8 | 金髪 | 巨乳 | 303 |
| 9 | 茶髪 | 元気 | 299 |
| 9 | 黒髪 | 眼鏡 | 299 |
共起頻度の上位は、黒髪―黒髪ロングストレート459、茶髪―ショートヘア375、黒髪―ショートヘア360、黒髪―ツンデレ333、黒髪―巨乳331、金髪―金髪碧眼324、茶髪―巨乳317、金髪―巨乳303、茶髪―元気299、黒髪―眼鏡299である。

赤いノードは髪色、青いノードは萌え属性を表し、中心性が高いほど図中の面積も大きい。図からは明瞭なコミュニティ構造が読み取れる。出現頻度の高い髪色ほど、多くの萌え属性ノードと結びつき、正の相関を示す。また、一部の髪色と萌え属性のあいだには双方向のリンクがあり、互いがそれぞれもっとも多く共起する相手となっている。ネットワークを巨視的に見ると、特定の髪色と萌え属性のあいだには、実際に一定の結びつきがあると言える。
3.2 頻度集計の限界
頻度集計は、共起関係を調べるうえで単純明快という利点がある。しかし3.1の結果からは、いくつかの問題も見えてくる。
第一に、表1と表2を比べると、黒髪、茶髪、金髪は出現頻度が高いため、ほかの萌え属性との共起も多く、上位10を占めている。この3色以外の組み合わせが初めて登場するのは、上位40まで順位を下げてからである。同じく、巨乳、ショートヘア、ツンデレも上位10に入っている。
第二に、表1の黒髪―巨乳(331回)と茶髪―巨乳(317回)を比べてみよう。頻度だけなら黒髪の結びつきが強い。しかし黒髪の出現頻度は茶髪の約138%であるのに、このリンクの差は約4%しかない。これでは、その萌え属性に対する重要性が黒髪のほうで高いとは言いにくい。逆に、「黒髪ロングストレート」や「金髪碧眼」は頻度こそ高くないが、非常に高い共起関係を持つ。つまり、「強いノードと弱い関係」と「弱いノードと強い関係」のどちらを取るかという難題に陥る。
最後に、ネットワーク図では、一つの萌え属性ノードが二つの髪色ノードと結ばれる場合がある。ある萌え属性にとってAが最高頻度の共起相手である一方、その萌え属性自体はBにとって最高頻度の共起語となることがある。この場合も、先ほどと同じ取捨選択の矛盾が生じる。要するに、頻度そのものの影響を受けるため、単純な頻度集計は共起を測る方法として適切とは言いにくい。
4. TF-IDFによる特徴抽出
4.1 TF-IDFの概要
ジップの法則によれば、語の出現頻度は順位に反比例する。これは、第3章で述べたように、高頻度語が必ずしもキーワードではないことを示している。キーワードをより適切に抽出するため、本稿はテキスト分析で広く使われるTF-IDFを採用する。TFは単語頻度、IDFは逆文書頻度を表す。ある語を含む文書が少ないほど、その語はカテゴリーをよく区別でき、IDF値は高くなる。計算式を以下に示す。
ここで、 は語の出現頻度、 は条件を満たすテキストの総語数、 はキャラクター総数、 はその語を持つキャラクター数を表す。TF-IDF値が大きいほど、その条件における語の重要度が高い。
4.2 データの選別
第3章の頻度集計に基づき、分析を簡略化するため重要性の低いノードを一部削除した。髪色では出現頻度の低い虹色と透明のノードを削除し、11種類を残した。萌え属性では頻度100未満のノードを削除し、222種類を残した。
4.3 髪色から見た性格のTF-IDF
髪色を条件として、共起する萌え属性のTF-IDF値を計算した。性格に関わる萌え属性だけを残した上位10項目を図2に示す。




髪色を条件とする計算は、視聴者がキャラクターの髪色を見たとき、その人物に現れそうな性格の重要度を順位づけする過程を模している。TF-IDFを抽出すると、一部の萌え属性の重要性が際立つ。たとえば白髪では、「狂気」の重要度が0.1を超えるが、頻度集計では白髪も狂気も出現数が少ない。また、一定のステレオタイプも見える。銀髪は、中国語圏のアニメファンが「三無」と呼ぶ、無口で無表情、感情を表に出さない性格に傾き、赤髪は活力に満ちた性格に傾く。
一方、ツンデレや元気といった性格属性は、髪色ごとにTF-IDF値が異なるものの、それ自体の頻度が高いため、多くの髪色で重要な位置にある。したがって、髪色だけを条件に性格を選別しても、説明力はやや不足する。
4.4 性格から見た髪色
次に制作者の視点、すなわち設定した性格に基づいてキャラクターへ髪色を与える過程を分析する。性格の萌え属性を条件として、共起する髪色のTF-IDF値を計算した。性格属性は数が多いため、1位と2位の髪色のTF-IDF値の差が0.05を超えるもの、つまり1位の髪色が明瞭に突出する性格属性だけを分析対象とした。上位5項目を図3に示す。図中の色は、その性格でもっとも重要な髪色を表す。

制作者の視点から、性格に対応する髪色の1位だけに注目すると、4.3で見たステレオタイプ、たとえば茶髪の「おっとりして純真」といった特徴がさらに見えてくる。
しかし性格だけを条件として髪色ノードを選別しても、やはり説明力は十分ではない。
4.5 交差分析
結びつきをより確かにするため、4.3と4.4の順位を交差させた。結果を表3に示す。簡略化のため、性格から髪色を見る側は上位2項目だけを抽出した。
| 結果 | 共起グループ |
|---|---|
| 交差 | 黒髪:大和撫子、優しい、氷美人、ツンデレ、ギャップ萌え 茶髪:優しい、癒やし系、天然ボケ、弱気 金髪:天然ボケ、ツンデレ 銀髪:三無、天然萌え 青髪:氷美人、お人好し、ギャップ萌え 紫髪:M属性、真面目 白髪:狂気 |
| 髪色→性格のみ | 黒髪:腹黒、天然ボケ、ツッコミ、元気、無口 茶髪:元気、ツンデレ、ギャップ萌え、腹黒、ツッコミ、おバカ 金髪:元気、腹黒、優しい、ギャップ萌え、毒舌、紳士、おバカ、強気 銀髪:ツンデレ、ギャップ萌え、腹黒、無口、天然ボケ、優しい、毒舌、氷美人 青髪:ツンデレ、腹黒、元気、優しい、天然ボケ、ツッコミ、女王 紫髪:ツンデレ、腹黒、ギャップ萌え、天然ボケ、元気、S属性、優しい、中二病 ピンク髪:元気、天然ボケ、腹黒、ツンデレ、優しい、小悪魔系、癒やし系、おバカ、毒舌、ギャップ萌え 赤髪:ツンデレ、元気、強気、天然ボケ、優しい、ギャップ萌え、おバカ、毒舌、ツッコミ、紳士 緑髪:元気、天然ボケ、ギャップ萌え、ツンデレ、腹黒、ドジ、ツッコミ、癒やし系、毒舌、恥ずかしがり オレンジ髪:元気、天然ボケ、おバカ、優しい、ツンデレ、ギャップ萌え、ツッコミ、癒やし系、毒舌、小天使 白髪:小天使、腹黒、ギャップ萌え、天然ボケ、ツンデレ、優しい、中二病、大和撫子、困難 |
| 性格→髪色のみ | 黒髪:三無、恥ずかしがり、クーデレ、真面目、お人好し、弱気 茶髪:負けヒロイン、天然腹黒、恥ずかしがり、鈍感、天然萌え、小天使 金髪:負けヒロイン、残念系、癒やし系、鈍感、小天使 青髪:多重人格、天然腹黒 紫髪:大和撫子 赤髪:狂気 オレンジ髪:残念系 |
双方向の交差に残った組み合わせは、黒髪―大和撫子・優しい・氷美人・ツンデレ・ギャップ萌え、茶髪―優しい・癒やし系・天然ボケ・弱気、金髪―天然ボケ・ツンデレ、銀髪―中国語圏の「三無」・天然萌え、青髪―氷美人・お人好し・ギャップ萌え、紫髪―M属性・真面目、白髪―狂気である。
交差した共起ペアは、ファンのあいだで広まるステレオタイプと強く重なっている。冒頭で挙げた「金髪ツンデレ」は両方の集合に含まれ、この組み合わせに実際に強い結びつきがあることを示す。一方、「ピンク髪ヤンデレ」は、二つの集合の和集合には現れない。
5. 原因の分析とまとめ
5.1 「金髪ツンデレ」型が生まれる理由
以上の分析から、日本アニメのキャラクターの髪色と性格(萌え属性)には一定の相関があり、その結果はアニメファンが長年抱いてきた直感とおおむね一致することが分かった。ここから、その相関が生じる理由を考える。
まず、髪色と萌え属性の種類が比較的限られていることは否定できない。半世紀近いアニメ制作の歴史を振り返れば、まったく現れたことのない髪色と萌え属性の組み合わせがまだあるとは、簡単には言えない。東浩紀の「データベース」論によれば、現代のキャラクター制作は基本的に、要素のデータベースから必要な項目を取り出して組み合わせる。ありふれた髪色と人気の性格(萌え属性)は、キャラクター全体の数に比べればごくわずかであり、ファンのステレオタイプにあるような組み合わせが繰り返されるのは避けられない。
要素を組み合わせるキャラクター制作は、現在のアニメでますます一般的になっており、その背後には二つの問題がある。一方には、消費社会におけるアニメ、とりわけ商業アニメの量産要求がある。制作者はすべてのキャラクターに膨大な労力を注ぐことはできないが、視聴者の印象に残らないほど平板にもできない。そこで、いくつかの萌え属性を加えることが一石二鳥の解決策となり、短時間で、見かけ上は均質でないキャラクターを大量に生み出せる。他方には、単独の作品内では個性的でも、全体としては著しく均質なキャラクターを消費する視聴者側の、ファストフード的な消費がある。今日の速い生活リズムのなかで、人々は「芸術作品」としてのアニメを腰を据えて見ることが難しくなり、「ファストフード」として、目まぐるしい視覚的刺激を与える作品をより多く求める。キャラクターの背後にある物語より、外見や言動から短時間で読み取れる萌え属性を好む視聴者も多いだろう。制作者と視聴者がともにこの状況を受け入れるなら、データベース型のキャラクター制作はさらに避けがたくなる。将来には、異なる萌え属性の新しい組み合わせがいっそう増えるかもしれない。
相関の存在を確認すれば、「金髪ツンデレ」のような固定的な組み合わせがなぜ氾濫するのかを、さらに論じられる。本稿は、その端緒を、偶然に設計された一人のキャラクターが作品の大成功によって視聴者とほかの制作者へ深い印象を残したことに求める。起源を考証するのは難しいため、ここではひとまず『スクールランブル』の沢近愛理を例とする。後の制作者は、こうした属性のキャラクターに触れると沢近愛理を想起し、無意識にツンデレへ金髪やツインテールなど似た属性を与えるのかもしれない。これは心理学でいう「予言の自己成就」によって説明できる。あまりに成功した一人のキャラクターの存在が、後の制作者の無意識に、そのキャラクターと属性の結びつきを生む。同時に、心は結びつきに合わない情報を自動的に濾過する。実証分析からは、金髪が「残念系」や「負けヒロイン」とも高く相関し、黒髪や茶髪にもツンデレが少なくないことが分かる。制作者が結びつきに合うキャラクターへより多く注意を向けることで、その後、三千院ナギ、秋月愛莉、澤村・スペンサー・英梨々などが生まれ、金髪ツンデレ、しばしばツインテールという組み合わせが強化された。

この過程が成立するには、消費者が商業的に受け入れることが前提となるが、実際に消費者はこの型を十分に支持してきた。すでに優れた先例があるため、似たキャラクターを見た視聴者は作品に触れてみようと思いやすい。「中国人はみんな白髪キャラ好き」という、かつて広まった言い回しも一例である。同じ説明は視聴者にも当てはまる。新しいキャラクターが次々に登場するなかで、印象に残り、すぐ思い出せるのは、必然的にごく少数の有名なキャラクターである。ある属性を有名な人物から想起すると、その属性は自然に、その人物が持つほかの属性とも結びつき、あたかもそれらが当然の組み合わせであるかのような心理的暗示が生じる。その後、同じ二、三の属性を備えた別のキャラクターを見るたびに印象が強まり、たまに反例を見ても認識は揺らがない。こうして金髪、ツンデレ、ツインテールなどを結びつけるステレオタイプが共有される。
5.2 「ピンク髪ヤンデレ」型が生まれる理由
しかし、視聴者の集合的な印象に「偏り」が生じる場合もある。たとえば、ピンク髪とヤンデレの関係である。この十年、視聴者のあいだでは両者を結びつける印象がしばしば見られた。ところが上の分析では、ピンク髪の全体的な頻度が低いだけでなく、「元気」や「天然」といった萌え属性のほうが、ヤンデレより重要度が高い。これも先ほどと同じく、一人の非常に成功したキャラクターから大きな影響を受けた可能性がある。本稿が想定するのは、『未来日記』の我妻由乃である。我妻由乃の造形が成功したことで、比較的ニッチだったヤンデレ属性が広く知られ、表情のミームがファンのあいだで大量に流通した。我妻由乃はほとんどヤンデレの代名詞となり、それに伴ってピンク髪もヤンデレと結びついた。その後、松坂さとうやキサラなど、この条件に合うキャラクターも現れて印象を強めたが、データ上の関係は顕著ではない。

髪色と性格の関係には、色彩心理学の影も見える。たとえば銀色は冷たい印象を与え、中国語圏で「三無」と呼ばれる人物像の、無口で無表情な冷淡さと一致する。赤髪は火のような情熱を感じさせるため、活力に満ちた性格も多い。同じく、ピンクはかわいらしい印象を与え、重要度の高い性格も実際にかわいらしいものが多い。しかしピンク髪には腹黒という重要な性格もあり、「ピンク髪は腹黒」という言い回しや、本稿で扱った「ピンク髪ヤンデレ」もある。その狙いはまさにギャップ萌えだろう。ピンク髪のかわいらしさによって、背後の暗さを際立たせる。変化の瞬間に視聴者を驚かせる一方、人物造形を立体的にもできる。この独特で、騙されたかのような落差が、組み合わせを広めたのである。
ただし、この落差を作ることは、物語と人物の設計に大きな力量を求める。処理を誤れば、視聴者がそのキャラクターを嫌うことにもなりやすい。したがってヤンデレは、キャラクター制作で頻繁に使われる萌え属性ではない。ヤンデレに優れた物語を与えられるなら、ピンク髪は必須ではなくなり、一般的な黒髪や茶髪でも人物を十分に造形できる。
以上から、髪色と属性の関係には二つの形があると分かる。一つは実在する関係であり、制作者が意識的に選び、視聴者にも同じ認識があり、双方向の理解を形成する。もう一つは一方向の関係であり、視聴者集団に錯覚が生じているものの、制作者集団が人物を作る際には明瞭な選択傾向を示さない。